Flower Vase

ある日ある時、大きな桜の木が真ん中にある庭に面した部署でひとりのデザイナーが仕事に取り組んでいました。シャンプーの詰め替え用パッケージのラベルデザインをする仕事です。

倒れないようにビニールの容器に水を入れておいて、そこに何案ものラベルを貼ってみる。やがてその日の作業を終えて、彼は机の上をそのままにして家に帰りました。次の朝、会社に来てみるとその容器に一輪の花が差してありました。もうひとりのデザイナーが、庭に咲いていた花を摘んで何気なく差したものでした。「これっていいよね。たのしいかもね。」この偶然の出会いをただ通り過ぎて、見過ごしていたら、この商品は生まれなかったのです。

はじめは、すとんとした形状のものにグラフィックデザインをしてみました。でも何か、つまらない。ただ表面デザインしただけで、形としての面白さがない。半年たったある日、布団の圧縮パックからヒントをもらい、ビニールを圧縮してフィルムを花瓶型にすることを思いつきました。試しにヴェネツィアングラスのような模様を描いて、アイロンで熱圧縮してみると、まさにガラスの花瓶そのもの。こうして、フラワーベースのプラダクトが完成したのです。ある日ある時、偶然に目を止めた瞬間から、およそ一年が経っていました。

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