Mirror Cup&Saucer が生まれたストーリー
「眼を騙す」という、シュールレアリズムでよく用いられた手法と同じ意味なのですが、このトリックアートでよく使われる鏡の仕掛けを、何か身近にあるものにデザインしたらきっとおもしろい、と考えたのがミラーカップ開発の出発点でした。
なぜカップ&ソーサーにしたのかというと、水平にある模様が縦方向に立ち上がっていく、そして離せば消えるという関係性がとてもおもしろいと思ったからです。
でも陶器を手掛けるのは初めての経験です。アイデアは出来上がったけど、これが技術的に可能なのかどうかさえ分かりません。そのリサーチから始めました。
そして長崎の波佐見焼にたどり着きました。波佐見焼は薄くて硬いから、鏡面加工が美しく仕上がる。ここでつくられた白磁のカップ&ソーサーを、今度は岐阜県の多治見に持っていく。パラジウムの粉を溶かして、職人さんにひとつひとつ手塗りで仕上げてもらうのです。
パラジウムを塗ることで浮き出てくる見えないキズ。刷毛ムラのない仕上げ。まさに職人さん泣かせの作業でした。
一方、デザインの作業も平行して進んでいきます。直線が曲線に、曲線が直線になったりしながら映り込むおもしろさやパターン。テーブルの高さとカップと人の距離。それらを研究して手書きで線を起こしていったのです。カップを動かすたびに図柄の変化をたのしめるように、ソーサーを少しおおきめにしよう。プレートだけで使っても魅力的なものにしよう。そんな想いで設計されています。
おいしい紅茶でも飲みながら、美しいトリックアートをお楽しみください。