新作ハンカチ デザイナーインタビュー vol.2
一枚のストライプ柄を、折りたたんだデザインが印象的なハンカチ「Find line Green」と「Find line Orange」。今回はこのふしぎな立体感のあるハンカチをデザインしたD-BROSのアートディレクター岩永和也に話を訊きました。
――今回のハンカチのデザインのアイデアは、どんなところから浮かんだのかをまず伺えたらと思っています。
岩永 このハンカチに限らず、“D-BROSが作るべき表現、提案したい表現”というものをずっと探していて。D-BROSのコンセプトとして「デザインはたのしい」もあるし、「グラフィックとプロダクトの間(平面と立体の間)」という考え方もあるので、そこの表現を上手くできないかと。
例えば、出来上がったグラフィックを切って立ち上げてみるとか、一回できたものを壊してもう一回面白い表現を探してみるとか。今回はいろいろ試した結果、折りたたむというところに行き着いたと言う感じですね。
――このストライプは実際に紙を折りたたんだものなんですか?
岩永 そうです。やっぱり実際に作ったものの方がリアリティがあって面白いと思ったので、何十個もたくさん切ったり折ったり実験をして、それで良さそうなものを使いました。
――紙を折っている時にどういうものが面白くなりそうというのは途中でコツを掴んだのですか?
岩永 いや、実際は折ってる時はわからなくて、これ良さそうだなと思っても、実際にデザインに落とし込むとあまり面白くなかったり、折ってる時はやりすぎかなと思ったものがデザインにはめ込むと良かったり。ハンカチの形に落とし込まないとわからないところがありました。
あと、影の出し具合が難しかったです。どのくらいまで影を強調するかとか、影の本数とか。紙を折りたたむ時にぴっちり折りたたむと影が出ないじゃないですか。紙がちょっと浮く感じをどこまで出すかというところは楽しかった部分でもありましたが、検証が大変でした。
――このハンカチは男女問わず使えそうなカラーでいいですね。
岩永 そうですね。白本さんの優しい雰囲気のデザイン2種があったので、ちょっとかっこいい系を作りたいなと思ってチャレンジしたって言う感じですかね(笑)。
――確かに。いいバランスですね。
岩永 結果的にそうなってよかったです。テーマもそんなに遠くなくて、僕は紙を折ったんですが、白本さんの「Pieces of paper」は、紙を切ってそのカケラでデザインしたと聞いているので。テーマ自体は近くても、それぞれの考え方で表現がこんなにも変わるんだなと、面白かったです。
――このハンカチは、畳んだらちょっとデザインがわかりにくくなるじゃないですか。そのあたりはデザインするにあたってどう考えましたか?
岩永 ハンカチは結構自己満足なところもあると思っていて。要は、自分のテンションを上げるものだと思っているので、これを人に見せるというよりも、これを持って自分の気持ちを上げるアイテムになればいいのでは、と思ってデザインしました。
――そうですね。自分の好きなデザインのものを持っているだけでテンションが上がりますよね。同感です!
最後に、D-BROSに限らずでいいんですけど、デザインをする時に大事にしていることはありますか?
岩永 そうですね……、正解じゃなくても、自分がときめく方にするっていうのがまず一つ。あとは、これは難しいんですけど、デザインのどこかしらに、何でこれはこうしたんだろうっていう違和感を残すということです。完成させすぎちゃうと、僕自身が魅力を感じなくなっちゃうことがあって、途中の感じというか、そこの微妙なラインを大事にしてます。僕のデザインだと、技術的にデザインしてしまうと面白くなくると思っていて。最初に思うがままに作ったラフの方がやりたいことが伝わる時があるので、それを忘れないようにしています。
――宮田さん(ドラフト代表 宮田識)の著書「デザインするな」が思い浮かびました(笑)。
岩永 そうですね、ついついデザインしすぎちゃうというか考えすぎちゃうというか。ようやく意味がわかってきたんですけど(笑)。見た目のセオリーというか、こうすると綺麗になるっていうのが少なからずあるんですけど、それを守ろうとして、元々やりたかったことが伝わらず本末転倒になる場合があるんです。そういう意味ではデザインのセオリーを無視してでも、もっと大事なことがあると思ってやっています。ドラフトにいた先輩たちはそうしてきているんじゃないかなと思います。だからこそ心に響くものがたくさん生み出されてきたのかなと。
――そうですね。このハンカチも手にとってくれた方にそんな思いが届くといいですね。